『景色はつながる』01. ユーリンさん(ウガンダ)・エメリンさん(ブルンジ)

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『景色はつながる』01. ユーリンさん(ウガンダ)・エメリンさん(ブルンジ)

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 『景色はつながる』は、冬季募金キャンペーン2021『この景色の先に。』期間中に配信する特別連載ブログです。本シリーズでは、さまざまな困難を乗り越え、一歩ずつ進んできたからこそ見えるものを「景色」とし、テラ・ルネッサンスの支援する方々が「これまで見てきた景色」、「今見えている景色」そして「この先見たい景色」をお伝えします。

 

初回の『景色はつながる』では、テラ・ルネッサンスの受益者であるウガンダのユーリンさん(仮名)とブルンジのエメリンさん(仮名)をご紹介します。ユーリンさんはウガンダの「元子ども兵社会復帰支援プロジェクト」の、エメリンさんは「ブルンジ農村部コミュニティにおける社会的弱者(EVIs)世帯の自立と自治支援プロジェクト」の支援対象者です。紛争や貧困という過酷な状況から一歩を踏み出した二人は、コロナ禍などの困難にもめげずに、目指す景色に向かって歩みを進めてきました。

 
わたしたちが生きていく中で見ていく、いくつもの「景色」。

 
彼女たちが見ている景色を、あなたはすでに見たことがあるかもしれません。もしくは、その景色を今ちょうど見ているか、これから見るかもしれません。

 
本シリーズを通して、景色のつながりを感じ、二人だけでなく皆さまそれぞれのこの先の「景色」に、希望を抱いていただけたら幸いです。彼女たちが体現する、「目標をもつ」ことで生まれる力強さに触れれば、きっと皆さまの内側からも力が湧いてくると思います。 

ぜひ、ご一読ください。

苦しみを乗り越えて手にした、技術と生活

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【フォローアップ調査時の弊会小川(左)とユーリンさん(右)】
 

ウガンダのユーリンさんは13歳の時に神の抵抗軍(武装勢力: LRA)に誘拐され、村に帰還できたのは19歳の時でした。彼女は6年もの間、少女兵として戦わされ、強制的に結婚もさせられました。

 
村に戻ると彼女の両親はすでに亡くなっており、親戚もいませんでした。村の人たちからも受け入れてもらえなかった彼女は、差別・偏見の対象となっていました。

 
PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみ、お金のない物乞い同然の生活の中で、何をしたらよいかわからない。むしろ、何をする気力もありませんでした。


そんな暗闇から一歩を踏み出したのは、帰還してから4年後の2006年。
ユーリンさんはテラ・ルネッサンスが運営する職業訓練施設に通い始め、洋裁や小規模ビジネスの技術を身につけます。2009年に訓練を卒業・独立して、初めての給料は18万ウガンダシリング(日本円で約1万円)。これは、当時のウガンダの公務員の平均月収(約7000円)を上回る金額でした。
 

自立を果たしたユーリンさんが、当時見据えていた景色は、「自分の土地を持つこと」。彼女の暮らす地域では、自分の土地で農業や牧畜を行うことは、生活の重要な基礎になります。ユーリンさんは、身につけた技術を活かし、洋裁の仕事に励みながら余裕があるときは小規模ビジネスを行うことで、土地を買うための資金を着実に増やしていきました。
 

しかし、ユーリンさんは新たな困難に直面することになります。

コロナ禍でも、たどり着いた景色

 

2020年4月、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための都市封鎖により、洋裁の仕事をまったくできなくなってしまいます。小規模ビジネスもうまくいかず、収入はゼロになってしまいました。

 
彼女は当時を振り返り、こう話します。
「収入がゼロになり、子どもたちに十分なご飯を与えることもできなかった。子どもたちのことを想うと不憫で、何か食べ物が手に入るまで家にも帰れなかった。」

 
他の卒業生も、コロナ禍でユーリンさんと同じような状況に陥っていました。そこで、2020年5月からテラ・ルネッサンスは、職業訓練施設の卒業生にマスク作りをお願いしました。ユーリンさんの頑張りは驚くほどで、卒業生の中で一番多くのマスクを生産してくれました。

 
そして、マスク作りをしながらコツコツお金を蓄えた彼女は、2ヘクタールの土地を買うことができました。コロナ禍という逆境の中で努力を重ね、自分が描いていた景色にたどり着いたのです。

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【前向きにマスク作りに取り組むユーリンさん】


そして、彼女は新たな景色を見ようとしています。それは、土地を耕して農業を始め、将来的には自分たちが住む家と家畜用の家を建てること。


子ども兵という過酷な経験から這い上がって自立を手に入れ、コロナ禍の絶望にも負けずに、しなやかに逆境を乗り越えた彼女は、叶えた夢のさらに先へ、すでに進もうとしています。その力強さは、彼女自身や私たちに、これからまた新たな景色を見せてくれるでしょう。


(元の記事はこちら)

「子どもや自分自身を支えたい」という原動力

ブルンジのエメリンさんは、34歳のシングルマザーです。母親と、2人の子どものうちの1人と暮らしています。

 

収入を得るために売春せざるを得ないこともあったというエメリンさんが、一歩を踏み出し、テラ・ルネッサンスで洋裁の訓練を受けることを決めたのは、「ミシンがあれば家でも仕事ができるようになる」と考えたからでした。訓練生に選ばれたときのことは今でもとても印象に残っており、彼女の母親も訓練に参加することを応援してくれたと、彼女は話します。

 

訓練に参加してからは、洋裁クラスのリーダーとして活躍してきたエメリンさん。「努力することで、将来子どもや自分自身の生活を自らが支えることができる」という想いで、一生懸命に訓練に取り組み、最終試験では一番の成績を修めることができました。

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【洋裁訓練に励むエメリンさん】

 

そして、ブラウスやスカート、ドレスなど、洋裁や小規模ビジネスに関するたくさんの知識や技術をつけた彼女は、ブルンジのムワロ県でグループビジネスを始めます。そこでの収入から、子どもをサポートするための費用を家族に送ることができるようになりました。

 

訓練中に心に描いていた「子どもや自分自身の生活を自らが支える」という景色を、エメリンさんは努力を重ねた末に見ることができたのです。家族も、彼女が家族をサポートしてくれることを喜んでいます。

振り返って見える景色、この先に見える景色

 また、彼女が変わったのは、技術や収入の面だけではありません。ふるまいも変わりました。訓練を受ける前はやむを得ず売春をしていた彼女でしたが、洋裁の仕事に誇りをもって取り組み、収入を得られるようになった今では、以前とは心持ちが変わり、自ら売春を断ることができています。

 

新たな景色にたどり着いた彼女は、過去を振り返ってこう話します。「貧しいから売春を続けていくことは、良くないことだ」。

 

お客さん不足などの困難にぶつかりながらも、エメリンさんは地道にビジネスを続けています。彼女が次に思い描く景色、それは「子どもや自分自身のための土地を手に入れること」。エメリンさんの地域でも、生計において土地は大きな意味を持ちます。そしてもう一つ見据える景色が、彼女の誇りである「洋裁をこの先も続けていくこと」です。

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【製作した色鮮やかなデザインの洋服】

 

自分の目指す場所に向かって一歩ずつ、着実に歩みを進めるエメリンさん。その道のりの中で誇りを手にしたからこそ、過去を見つめ、ふるまいを変えることができました。そんな彼女の姿は、見える景色だけでなく、その「見え方」も変わっていくことを教えてくれます。少しずつの積み重ねがもたらす、大きな変化。彼女が次の景色を見たときに何を想うのか、楽しみです。

 

元の記事はこちら

◆◇ 冬季募金キャンペーン2021 ◇◆ 実施中!

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目標をもつことは大事だという話は、よく聞かれます。

しかし、「何をする気にもなれない」ような過酷な状況下で、「なりたい自分」を心に描くことは、決して簡単ではありません。それでも、ユーリンさんやエメリンさんだけでなく、これまでたくさんの訓練生・卒業生たちが、一歩を踏み出し、「こうなりたい」という目標を胸に努力を重ね、新たな景色に出会ってきました。

 

現在もなくならない紛争被害や貧困。未だに残るコロナ禍の影響。


下を向きそうになるときも、テラ・ルネッサンス創設からの20年間で見せてくれた彼女ら・彼らの軌跡が、「ひとり一人に未来をつくる力がある」ことを思い出させてくれます。

私たちはこれからも、一歩を踏み出そうとするひとり一人の背中を押し、共に歩んでいけるよう、活動を続けてまいります。

 

テラ・ルネッサンスでは、2021年11月18日から2022年1月12日まで、冬季募金キャンペーンを実施しています。アジア・アフリカの紛争被害者の方々の自立に向けた歩みを支える、弊会の活動を継続していくために、この期間に【2,000万円】のご寄付を必要としています。

彼らと共に新たな「景色」にたどり着くための支援に、寄付という形で、皆さまにご協力いただけますと幸いです。 

 

 

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記事執筆/

啓発事業部インターン 田代啓

執筆サポート/
啓発事業部スタッフ 津田理沙

啓発事業部インターン 小川さくら 

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