【NPO対談】北九州で“孤独”を抱きしめ、アフリカで“紛争の傷”を癒すーー異なる2つの現場で見つけた、希望を生み出す共通点

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【NPO対談】北九州で“孤独”を抱きしめ、アフリカで“紛争の傷”を癒すーー異なる2つの現場で見つけた、希望を生み出す共通点

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抱樸館に掲げられた団体名の由来

社会の”ルール”からこぼれ落ちた人を、無条件で抱きしめる場所

啓発事業部の佐藤です。

6月13日、私は福岡県北九州市を中心に活動する「認定NPO法人抱樸(ほうぼく)」を訪問しました。会場は、代表の奥田知志さんが牧師をする日本バプテスト連盟東八幡キリスト教会で、優しい木の香りに満ちていました。

同会を訪問することは、テラ・ルネッサンス創設者、鬼丸の長きにわたる願いでした。

鬼丸が、抱樸の奥田理事長のお話を聞き、「まるごと支援する」「社会全体で支援する」という抱樸さんの支援のあり方が、テラ・ルネッサンスの支援と通ずることを感じ、意見交換をしたいという強い想いから実現に至りました。

37年もの間、抱樸は社会から「見放された」人々にとっての最後の砦であり続けています。ホームレス状態にある人々や、生活に困窮する人々を支援する、その活動の核心に触れた時、私たちは息をのみました。

「私たち「抱樸(ほうぼく)」の名前は、老子の、“荒木をそのまま抱きしめる”という言葉から来ています。」
ごつごつとささくれ立った、ありのままの「荒木」のような人間を、ただ、そのまま抱きしめる。それが抱樸の哲学でした。

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日本バプテスト連盟東八幡キリスト教会内の様子
教会左奥に併設された納骨堂には家族のもとに帰れなかった人のご遺骨も預かられている

嘘をつく、暴力をふるう。社会が定めたルールの下ではじき出され、家族や友人からも見放された人々は、深い「孤独」に沈んでいきます。

「辛い目にあってきた人たちは、サバイバーなのです。
嘘をついたり、暴力を振るったりしなければ生きていけない場所に晒され続けたのです。」

専務理事の森松氏はそのように語りました。

孤独は、人を福祉から遠ざけ、時に犯罪や自死へと追いやります。
だからこそ、抱樸はあえてどのような人も「まずは受け入れる」ことを念頭に運営しています。

「どうせ裏切られる」
「誰も信じない」

固く心を閉ざした人を、何度でも、無条件で受け入れます。

「家族」のように寄り添い、本人が自らの足で再び立ち上がろうとするその日まで、
静かに、しかし決して諦めずに見守り続けるのです。

その姿は、私たちが遠いアフリカの地で続けてきた活動の光景と、
不思議なほど重なって見えました。

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認定NPO法人抱樸 森松専務理事による活動説明

絶望の淵から生まれた「分かち合い」という希望

私たち、認定NPO法人テラ・ルネッサンスは、ウガンダやブルンジなど10か国において、紛争により心と身体に深い傷を負った元子ども兵たちの社会復帰を支援しています。

先日、スタッフのトシャが食事の無料券をもらった時、
真っ先に「食べ物に困っている人に渡したい」と口にしました。
彼女のその深い優しさは、想像を絶する原体験から生まれています。

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認定NPO法人抱樸の活動について質問をするトシャ

トシャはブルンジの紛争で、人生で最も幸せだったはずの
「初めて学校に行った日」に、故郷を焼かれ、家族を殺されました。

目の前に広がる死体の山、燃え盛る我が家。
7歳という幼さで、「なぜ、人間はここまで残酷になれるのか?」という疑問を抱き、
絶望に打ちひしがれ、ウガンダで難民となり、その後路上生活で飢餓に苦むという、
壮絶な経験を経てきました。

首都カンパラのきらびやかな発展の陰で、飢えに苦しみ死んでいく子どもたち。
その矛盾を目の当たりにした彼女は「自分にできることはなんだろう」と考え続けました。
やがてテラ・ルネッサンスの活動に出会い、その理念に呼応し、20年以上、活動を続けています。


 ”Just simply living together, sharing together” ーーー
「ただ共に生き、分かち合うことこそが、大切です。」

だから、私たちの支援は一方的ではありません。
「むしろ学ぶことの方が多いです」とトシャは言います。

特別なプログラムではなく、草むらに座って他愛ない話をする。
ただ、一緒に笑い合う。
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認定NPO法人抱樸スタッフの方々

そんな何気ない瞬間に、固く閉ざされた元子ども兵たちの心がゆっくりと解けていきます。
抱樸が「家族」として寄り添い続けるように、
私たちもまた、一人の人間として彼らの隣に座り続けます。
特別なものは必要ないのです。

必要なのは、その人が本当に求めることを見つめる眼差しと、
自分にできることをするという、シンプルな行動だけなのです。

希望は「恩送り」で続いていく ― “私”からはじまるアクション

「価値のない人間なんていない」
この確信こそが、抱樸とテラ・ルネッサンスを繋ぐ、揺るぎない共通項です。
この信念があるからこそ、私たちは「その人が自立するまで」という中長期的なサポートを貫くことができます。

テラ・ルネッサンスには「Pay Forward(恩送り)」というプロジェクトがあります。支援を受けて洋裁やビジネスの技術を身につけた受益者が、その恩を私たちに返すのではなく、次の助けを必要とする後輩へと繋いでいくのです。

支援が支援を生む、希望の連鎖です。
これは、抱樸が目指す「支え合うコミュニティ」そのものでもあります。

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認定NPO法人抱樸 奥田理事長にウガンダのお土産を渡すトシャ

紛争や貧困は、遠い国の話ではありません。
その原因を辿れば、資源を消費する私たちの生活に行き着きます。
「私たち一人ひとりに責任がある」という視点に立った時、
初めて世界は「自分ごと」になります。

「まずはアクションすることが大事」
これは、資金のあてもなく活動を始めようとした弊会理事の小川に、
その無謀さをトシャが制止しようと
「大丈夫なの?お金、足りるの?」と尋ねた際、小川が返した言葉です。

アクションをすること。問題に対して即時向き合うこと。

この記事を読んでくださった、
あなたの心に何かが灯ったとしたら、それが全ての始まりになります。

絶望を終わらせるのは、大仰な「支援」ではありません。
誰かの痛みに想いを馳せ、分かち合おうとする、その何気ない気持ちと行動です。
それこそが、私たちが二つの現場で見出した、たった一つの答えなのかもしれません。

この夏、テラ・ルネッサンスは、この希望の連鎖をさらに広げるため、6月5日から8月6日まで、1,300万円を目標に寄付を呼びかける夏季募金キャンペーン2025『平和を求める声に、今、応えたい。』を実施しています。

あなたのアクションが、誰かのかけがえのない未来を創る力になります。

【テラ・ルネッサンス夏季募金キャンペーンに参加し、希望の連鎖に加わる】
https://www.terra-r.jp/kakibokin2025.html



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抱樸とテラ・ルネッサンスの職員ら

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