【9/21国際平和デー 特別記事】夢は、次の夢へ。元子ども兵たちが紡ぐ「恩送り」の物語 ~ウガンダ・元子ども兵社会復帰プロジェクトの軌跡~
-1.png)
啓発事業部の佐藤です。
世界には、25万人の子ども兵がいるとされています。子ども兵、というのは、反政府組織などに誘拐され、戦いを強いられた18歳未満の子どもたちのことです。男の子は武器を持たされ、女の子は兵士と強制結婚をさせられるなど、その経験の壮絶さは想像できないほど。
帰還したとしても、幼い頃から戦場にいたことから、基礎教育を受けておらず社会復帰が難しい元子ども兵たちが、現在も多く存在します。
テラ・ルネッサンスの元子ども兵社会復帰支援プログラム
-1.png)
テラ・ルネッサンスは、反政府組織に誘拐された元子ども兵らの社会復帰支援を、ウガンダ北部のグル県を拠点に20年以上続けています。
このプログラムは3年間を通じ、洋裁や木工大工などの訓練を受け、支援対象者たちが手に職をつけ、再び社会において自立した生活を築いていくためのサポートをするものです。
技術訓練だけではなく、彼ら・彼女らが生活する地域のコミュニティとの対話や心のケアも含まれます。
卒業した元こども兵たちは、グループで店舗を構え、収入を得る段階に入ります。過去に壮絶な経験をした彼ら・彼女らは、この期間に少しずつ「夢」を取り戻し、語ることができるようになります。
-1.png)
ドリームプラン・プレゼンテーションとは?
「ドリームプラン・プレゼンテーション(通称:ドリプラ)」は、コンサルタントの福島正伸氏によって日本で生み出された、夢を応援し合うためのプレゼンテーション手法です。
「この素晴らしい取り組みを、ウガンダの元子ども兵たちのために役立てたい」
そう強く願い、テラ・ルネッサンスにドリプラを提案してくださったのが、長年私たちの活動を応援してくださっている中熊賢(なかぐま まさる)さんでした。
中熊さんの熱い想いが実を結び、テラ・ルネッサンスのウガンダスタディツアーでは、2013年からこの「ドリプラ」が導入されることになりました。以来、3年ごとに行われるツアーで、最も感動的で、学びの深いプログラムとして続いています。
-1.png)
中熊賢さん(左)と当会理事長の吉田(右)
元子ども兵が語る夢
今年8月にウガンダツアーを実施した際、グルで私たちに夢を語ってくれたグレースさん(仮名)の言葉を紹介します。
彼女は、テラ・ルネッサンスの支援を受けた最初の子ども兵の一人。
「私たちは開拓者(パイオニア)なの。」と、その胸には誇りが宿ります。
.png)
グレースさん(仮名)
11歳で反政府軍に誘拐され、2002年に帰還。
しかし、待ち受けていたのは父からの拒絶という過酷な現実でした。
「私に生きる価値はないのだろうか?」と自問し、一時はアルコールに溺れる日々を送っていたと言います。
そんな絶望の淵で出会ったのが、テラ・ルネッサンスでした。
洋裁技術と心理社会的ケアを通じて、彼女は生きる術と希望を取り戻していきます。
「ここで神様を見たわ」と語る彼女、訓練中の食事が保証され、安心して眠れる日々は、何よりの心の支えだったのです。
自分のためだけの「夢」ではない
卒業後、ミシン一台から始まった彼女の新たな人生。
しかし、彼女がテラ・ルネッサンスで学んだ最も大切なことは、「得た知識を、独り占めしないこと」でした。
.png)
洋裁学校にて
「コミュニティには、まだ苦しんでいる人がたくさんいるから」
そう言って、彼女は現在、自身のお店で10人もの若者に、わずかな費用で洋裁を教えています。それは、かつての自分と同じように、誰かの助けを必要としている人たちへの恩送り、「Pay Forward(ペイ・フォワード)」の実践です。
.png)
元子ども兵らによる服飾雑貨出店
そして、彼女の夢はさらにその先へと続きます。
「私の夢は、自分の土地を買い、学校を建てること。そして、孤児や同じ境遇の子どもたちが、無料で訓練を受けられるようにすることです。」
壮絶な過去を乗り越えた彼女の夢は、もはや自分一人のためではありません。自分が受けた希望を、次の世代へとつないでいく。その力強い意志が、そこにはありました。
彼女は最後に、満面の笑みでこう付け加えました。
「テラ・ルネッサンスの皆さん、心から感謝しています。…それから、もうひとつ、お願いがあるんです・・・私たちを一度、日本に連れて行ってください!」
真剣な表情から一転した、そのお茶目な一言。緊張していた会場の空気が一気に和らぎ、この日一番のあたたかい笑いと拍手がわき起こりました。
それは、支援する側・される側という関係を越えて生まれた、人と人との確かなつながりを感じる瞬間でした。
.png)
ドリプラ会場の様子
アフリカの人々は「かわいそう」ですか?
20年以上にわたってこの事業を支えてきたテラ・ルネッサンスのアフリカ事業コーディネーターのトシャ・マギーは、ゆっくりと、問いかけました。
「今日、ドリプラを聞いた皆さん。何を感じましたか?アフリカの人々は、かわいそう、貧しい、と感じましたか?」
.png)
一人ひとりに語りかけるように話すトシャ・マギー
「アフリカの人々は、貧しくも、かわいそうでもない。ただ、自分たちの能力を活かす方法を必要としているだけなんです。」
「もともと私たちは、自分たちの力で生きていました。畑を耕し、食べ物を得てきた。それを、紛争がこわしてしまったのです。」
私は息をのんで、一つひとつの言葉に聞き入っていました。
グレースさんをはじめ、プレゼンターたちが語る夢はすべて、自分の子どもや周りの人を幸せにすることでした。自分がお金持ちになる、といった夢ではなく、常に大切な誰かを想うその姿に、胸が締め付けられると同時に、その心の豊かさを前に言葉を失うほどでした。
.png)
抱き合うグレースさん(仮名)と参加者
結びにーーー「恩送りの輪にあなたも」
彼らが抱く壮大な「Pay Forward」の夢。
その夢を支えることは、一方的な「支援」ではなく、ウガンダの未来を共に創る「パートナー」になることだと、私たちは信じています。
この記事を読んでくださったあなたも、ぜひその一員に加わっていただけたら嬉しいです。