【活動レポート:コンゴ】二村間の和解に向けて―洋裁と石鹸作りの訓練を修了!
コンゴ民主共和国・中央カサイ州ディンべレンゲ地区のバクアカニンガ村とバクアンダエ村では、2021年9月から、UNDPとのパートナー事業を実施しています。二つの村の間では、ダイヤモンドを採掘できる森の所有権をめぐり、地域間紛争が続いてきました。
そこで、本プロジェクトでは、この地域で紛争の影響を受けている方々の生計を向上させるために、インフラ整備・技術訓練を行ってきました。バクアカニンガ村では市場の整備と洋裁訓練(マスク作り)に、バクアンダエ村では診療所やコミュニティ施設の整備と、地元のアブラヤシの加工・石鹸作りに取り組んでいます。
そして、もう一つの活動として、それぞれの村で生産している石鹸とマスクを、双方の村人たち2,000名に提供します。この活動には、お互いに生産したものを交換し、分け合うことで、両村間の和解を促進できるようにという願いが込められています。
■洋裁技術訓練 in バクアカニンガ村
バクアカニンガ村では、洋裁技術訓練を受けていた、最貧困層の女性たち30名が、無事全員修了することができました!修了式には、地元のリーダーやディンベレンゲ郡のリーダーの方々、テラルネスタッフが集まり、修了証書が渡されました。
訓練期間の後半には、彼女たちはマスク作りを行い、3,000枚のマスクを生産しました。これらのマスクは、テラ・ルネッサンスが買い取り、この地域に暮らす2,000世帯の貧困層やエッセンシャルワーカーの方々への支援物資として活用しています。
あわせて、対立関係にあるバクアンダエ村の支援対象者の方々が作った石鹸も、この機会にプレゼントしています。
また、この日、修了者一人ひとりに一台のミシンと洋裁用具などを供与しました。これから彼女たちは、これらの道具と、マスク作りで得た資金を元手に、洋裁の仕事を始めていきます。
受け入れ時のベースライン調査では、ほぼ全員が現金収入が月数百円程度(ほぼ無しに等しい)の状態でした。紛争下の暮らしではありますが、これからは洋裁の仕事を通して、最低限の食料や日用品を自らの力で購入し、レジリアントに生きていってほしいと願っています。
■アブラヤシ加工・石鹸作り in バクアンダエ村
バクアカニンガ村で配布された石鹸は、隣村のバクアンダエ村の支援対象者によって生産されています。
ここでは、アブラヤシから石鹸の原料である油を抽出する技術訓練を受ける30名と、石鹼作りの訓練を受ける30名の、あわせて60名が、原料の加工・製造・販売を一体となって行っています。プロジェクトを通して建設されたコミュニティ施設が、二つの工程の拠点となっています。
先日こちらも無事全員が訓練を修了し、二つの訓練の合同での修了式を行いました!彼ら、彼女たちも、これから石鹸の販売を通して収入を得られるようになります。
この地域はコンゴ民主共和国の中でも最も貧しく、紛争の影響を受けている場所です。道路状況も悪く、援助物資も簡単には運べず、最も脆弱な状況に置かれています。
このような地域で、地元の資源である自生のアブラヤシを活用することで、紛争やコロナ禍といった困難やリスクにさらされながらも、しなやかに適応し、生活を再建していく営みは、まさにレジリアントな営みだといえます。
石鹸は、約1ヶ月間で約1万個を生産することができており、販路もすでに開拓しています。地元の住民たちに販売するのと同時に、ブジュマイという街でも需要があり、そちらでの買い手もついています。
最近は、ウクライナ危機の影響によって物価がかなり高騰しており、石鹸などの日用品もガソリン価格の高騰、すなわち運搬費の高騰により、値上がりしています。そのため、彼ら・彼女たちが地元の資源を活用して石鹸を生産することで、自身の収入になるだけでなく、村人たちにとっても、外から運搬してくる(高い)石鹸を買わなくても、地元産の石鹸を使うことができるようになります。
洋裁、またアブラヤシ加工・石鹸製造の技術を習得した支援対象者たち合計90名は、これからも様々な困難に直面していくことが予想されます。そのため、彼ら・彼女たちの収入と生活が安定するように、今後も開業支援のフォローアップを続けていきます。
ひとまず、無事に全員修了できたことを嬉しく思います。二つの村の対立については、すぐの解決は難しいとしても、少しずつ両村の和平が進むように、これからも活動を続けていければと思っています。
報告/
理事長・海外事業部長 小川真吾
テラ・ルネッサンスは、ウクライナの難民(避難民)の方々への食料・日用品の支給、炊き出し拠点の設置等の緊急支援だけでなく、避難生活が長引くことを鑑み、難民(避難民)等の生計向上のための支援も実施することを決定しました。
そのため、隣国ハンガリー・ブダペスト市に事務所を開設し、腰を据えた中長期的な支援活動を開始します。
同時に、弊会の活動地であるコンゴ民主共和国(以下コンゴ)を含む、ウクライナ以外の国・地域の紛争や、その影響を受ける人々の「いのち」が忘れられるという状況は、決してあってはなりません。
なぜなら、紛争で奪われる「いのち」や「暮らし」に、区別はないからです。
そこで、20年以上もの間紛争が続き、多数の方々が人権侵害や貧困に苦しんでいる、コンゴの紛争被害者の支援も強化することにしました。
これらの活動経費として、7月31日までに4,000万円のご寄付を呼びかけています。
現地の最新状況、支援報告は、ウェブサイト、SNSを通じて随時発信していきます。
皆さまのご理解・ご協力を、どうぞよろしくお願い申し上げます。