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【カンボジア】本来の姿を取り戻した地雷被害者が見せてくれた希望

【アジアレポート/2020年12月_Topic01】

  

カンボジアの北西部、バッタンバン州カムリエン郡にはイェン・ハンさん(50歳)という、2017年から支援している地雷被害者がいます。今でも、2017年の事業開始前にインタビューした時のことをよく覚えています。家まで行く道が悪く、車では途中までしか行けないためバイクで迎えに来てくれましたが、結局そこから歩いて家に行きました。
 
最初に会った時は、不機嫌でどこかちょっと怖ささえも感じる印象でした。しかし、やっとの思いで暑い中、人里離れた畑の中の家にたどり着くと、少し嬉しそうに、そして思いがけず多く話をしてくれました。

 

それでも、話の内容は正直とても絶望的な生活の状況についてでした。家の周りはかなり広い畑で、バナナが生い茂り、様々な果物もなっているにも関わらず、土地へのアクセスの悪さからマーケットに売りに出せていませんでした。そのため、奥さんとタイへ出稼ぎに行っていました。
 
タイで日当を稼いでも貯蓄できるほどではなく、換金作物であるキャッサバやトウモロコシの栽培で失敗したために残った借金によって生活はよくならないというのです。あるのは目に見えない借金だけというのが、何とも言えない気持ちにさせられました。

【アジアレポート/2020年12月_Topic01】

↑イェン・ハンさん(左)にインタビューする現地スタッフのクン・チャイ(右)

ハンさんのような、農村で暮らす地雷被害者を含む障害者の人たちが、どうしたら生活していけるかと考えたのが、この事業を始めた理由の一つでした。ただ、あまりに大きな借金の前に、本当に大丈夫なのだろうかと、こちらも不安になったものでした。

↑ヤギ小屋を自分で建設して拡大したハンさん(右)とカムリエン郡農林水産事務所の農業専門家

そして、事業の終盤の2020年12月に、再度畑の中の家を訪問すると、ちょうどヤギ小屋を自分で拡大し、広い土地を利用してヤギや鶏、アヒルの飼育に、野菜栽培もしていました。
 
以前は多額の借金をして栽培するキャッサバやトウモロコシに生活は依存していました。しかし現在ではヤギ、鶏、アヒル、野菜の栽培からの収入に加え、事業開始後にカンボジア政府からの障害を持つ退役軍人への補償金も支払われるようになりました。ヤギは、1,400ドルの収入につながっており、広い土地を活用してさらに拡大していく計画だそうです。

  

インタビューの中でも、ハンさんが自分自身のことを振り返ってくれました。

↑ハンさんが飼育するアヒルの子ども

「以前は、キャッサバやトウモロコシの栽培に失敗し、何をしていいか分かりませんでした。不機嫌で誰とも話したくありませんでした。お酒もたくさん飲みました。テラ・ルネッサンスの支援を受けてから農業技術を学び、ヤギやアヒルを飼育し始め、野菜を栽培して自分たちで食べたり、隣人にあげたりしました。タイへの出稼ぎをやめ、キャッサバやトウモロコシの栽培もやめました。そうしているうちに自分の態度も変化しました。幸せを感じられるようになり、お酒を飲むのをやめました。フレンドリーになり、人生に希望を持てるようになったのです。」

↑テラ・ルネッサンスの事業で設立された家畜銀行から貸し出された鶏を飼育する様子

この時、ハンさんは、本来は素敵な笑顔のフレンドリーな人だったのだ、と気づきました。それがこんなに絶望するほどの状況に追い込まれたのは、地雷の被害のせいだけではありませんでした。グローバル自由主義経済の中で生まれる、歪みのなかに落ちてしまっていたからでした。どんな時に幸せを感じられますかという質問に、「夕方仕事をした後、作物や家畜を見るとき」と答えてくれました。

  

元のハンさんに戻ると、周りの人たちとの関係性も良くなり、お金だけでない関係も取り戻していました。昨年から続くコロナ禍と、さらに10月に発生した大洪水の影響で、カンボジアでは限られた仕事しか出来なくなっていますが、ハンさんは、この状況でも以前の様な絶望ではなく、希望を感じて生きている姿にとても嬉しくなりました。

  

人はやはり、お金だけがあっても人間らしい生活はできません。人と人とのつながりのなかで、人間らしく生きていくことができるのです。

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記事執筆/

海外事業部アジア事業担当

江角 泰

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