【ウクライナ】ウクライナの子どもたちへ届ける『チロリ』と心の平和―ウジホロドの戦災孤児を訪ねて
【2025年9月 活動レポート/ウクライナ】
テラ・ルネッサンスのウクライナ西部における支援活動を通し、様々な人と出会い、助けられてきました。なかでも、去年の夏、赤十字国際委員会に勤める友人に紹介された「ミスター・イエロー・ブルース」こと大木トオル氏は特に印象深く、ウクライナ国内の厳しい状況を一生懸命伝える私の話に、ブルース・シンガーらしい深みのある声で何度も頷いてくれました。初対面なのに、言葉だけではない心の会話が交わせた事が、非常に嬉しかったのを昨日の出来事のように覚えています。
彼は今から半世紀ほど前の1976年にアメリカに渡り、日本人歌手として初めて全米ツアーを催し、マディ・ウォーターズやB.B.キング、ベン・E・キングなどの巨匠達と共演した人物で、ブルース愛好家じゃなくとも名前くらいは聞いた事がある生ける伝説ですが、実は国際セラピードッグ協会の設立者でもあります。人の心の健康や幸福感を向上させる、訓練されたセラピードッグをウクライナに送り込む事はさすがに、戦時中という事もあり断念せざるを得ませんでしたが、せめてチロリの話をウクライナの子どもたちに届けようというところから協力し合う事になりました。
あれから1年経ち、駐日ウクライナ大使館の協力でウクライナ語に訳された名犬チロリの絵本が完成しました。新学期が始まり、9月にはウクライナ・ウジホロド市の子どもたちにノートや筆記用具と共にチロリの絵本が配られ、大変喜ばれました。
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【子どもたちへ『チロリ』を配る筆者(左端)】
今回、対象となった児童は、戦争によって肉親を亡くした戦災孤児や戦災母子家庭の子どもたちです。
3年以上続けている、週2回の炊き出しも重要な支援のひとつですが、時にはこのような心のケアを通じて、少しでも戦争の痛みを和らげる事ができるよう、これからも頑張っていきたいと思っております。
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【子どもたちとの集合写真】
贈呈式が終了したあと、ウジホロド市出身の戦死者を奉る墓地に行き、手を合わせてきました。
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【ウクライナ国旗とともに立ち並ぶ戦死者の墓(ウジホロド市)】
昨年に比べ、飛躍的に増えている墓の数に恐怖し、改めて自分の無力さを噛みしめました。
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記事執筆
海外事業部 ハンガリー事務所長
コーシャ バーリン・黎