【カンボジア】遠隔でもできることはたくさんある!バイトーン農協の運営支援
【2025年8月 活動レポート/カンボジア】
-1.png)
2023年からバッタンバン州サムロート郡で実施している農業協同組合運営能力強化支援事業は、終了まで残り4ヶ月。いよいよラストスパートをかける時期となりました。
支援しているバイトーン農協があるサムロート郡は、タイとの国境に近い地域ですが、実は、タイ=カンボジア国境紛争の影響で、8月以降国境から40km圏内に渡航制限がかかっています。そのため、テラ・ルネッサンスの職員は、従来のように農協に行って活動することができていません。
一方で、武力衝突が勃発した当時は避難をしていた農協職員たちも、現在はほとんどがサムロートの自宅に帰ってきています。そこで、テラ・ルネッサンスの職員が農協に行けない状況下でもできることを探し、農協職員と活動を進めています。
本レポートでは、直近の活動をピックアップしてお伝えします。
1)家畜飼育支援制度
農協が鶏・アヒル・ヤギ・豚の飼育を支援するサムロート地域の40世帯は、武力衝突を受けて避難した世帯もいましたが、現在はほとんどの方が自宅に戻っています。幸いなことに、避難している間も、家族の誰か一人が家に残って家畜の世話をしたり、近所の人に家畜の世話を任せていたため、家畜が放置され死んでしまうということは起こりませんでした。
.png)
【豚の飼育指導をする農協職員】
農協としてこれらの情報収集ができたこと自体も、農協職員の調査能力が十分上がったと考えて良いと思います。
従来はテラ・ルネッサンスの職員と農協職員が一緒に家畜飼育世帯を訪れて調査をしていたのですが、今回は農協職員たちは自力で調査をしなければならず、どこまでできるか心配していました。しばらくは国境情勢が落ち着かず、調査が進めにくかったものの、直接訪問できない場合は電話で調査をするなど工夫をし、問題なく調査することができました。思いがけない形でこれまでの指導の成果を見ることができました。
課題もあります。9月2日にバッタンバン州で大雨が降り、水系の上流にあたるサムロート郡は洪水に見舞われました。深夜に突然水位が上がったため多くの世帯で対策ができず、農協職員の話では、鶏やアヒルが合計で100羽ほど流されてしまいました。繁殖できる羽数が残っていればまた増やせますが、全て流されてしまった世帯は増やすことができないため、より詳細な調査を進めています。
2)農協の商品販売
テラ・ルネッサンスの職員が農協に行けず、またサムロート地域内の治安が流動的だった状況下で、従来予定していたサムロート地域内での営業活動が進めづらくなりました。農協が製造・販売する商品は、堆肥や有機液肥などの農資材です。
そこで、渡航制限がかかっておらず、かつ農業が盛んな他の地域に新規営業をかけることにしました。
.png)
【商品の紹介をする農協職員とテラ・ルネッサンス職員(中央の起立している2名)】
堆肥や有機液肥は、実際に使ってみて効果が実感できないと購入に繋がらないため、最初のステップとして、無料でサンプルを配布しました。農協の販売担当職員の頑張りもあり、2週間で合計12地域・249名にサンプルを配布することができました!もちろん今月の売上は低くなってしまいましたが、おかげで将来の顧客へ種まきができました。
9月は、「サンプルを使ってもらえているか?」「使ってもらえていたら効果はどうか?」と、再訪したり電話をかけたりして、商品のフィードバックを受けながら、地道に購入に繋げていこうと思います。
3)竹の防虫加工訓練
事業終了後、農協は自らの資金で家畜の飼育支援を続けていきます。その際、家畜小屋を地域資源で製作することができれば、家畜小屋を買う必要がなくなり活動の持続性が上がるため、竹を栽培し、家畜小屋を作る訓練を予定していました。
カンボジアでは、日本と同じく様々な種類の竹がありますが、どの竹も油分や糖分を抜く加工をしないと、虫に食われて耐久性が弱くなってしまいます。
元々は、タイからホウ酸塩を輸入して、溶液に漬けて乾かす防虫加工をする予定だったのですが、国境紛争の影響で国境が基本的に閉鎖となったため、ホウ酸塩の輸入が難しくなりました。
そこで他の方法を調査し、セメントを混ぜた溶液に漬け込む方法で訓練を実施しました。農協職員にバッタンバン市内に来てもらい、バッタンバン市内で行っている農業訓練センターの訓練生たちも一緒に、竹の防虫方法について学び、実践しました。この方法がカンボジアの竹でうまく行くのかどうか、まだなんともいえませんが、実験の結果を楽しみに待とうと思います。
.png)
【竹をセメント溶液に漬け込む】
テラ・ルネッサンスが事業地に行けなくなっても、農協が目指すことは変わりません。自分たちの商品を販売して、持続的に農協が運営できるようになる必要があります。
幸いなことに、現代はオンラインのチャットアプリがあり、毎朝ビデオ通話で会話することもできます。何より、農協職員の多くは、責任感を持って仕事をしてくれています。遠隔になって難しいこともありますが、事業終了後も、農協が持続的に運営され地域の農家や脆弱層の人々を支えられる存在になれるよう、引き続きサポートしていきます。
ーーーーー
記事執筆
海外事業部 カンボジア事業
津田理沙