【カンボジア】ヤギ糞とリゾートホテルから始まる!? サムロート農協財政改革!
【2025年5月 活動レポート/カンボジア】

私たちが運営支援をしている現地の農業協同組合「バイトーン農協」では、今月も新しい動きがありました。それは、コンポスト(有機肥料)を、これまでの10倍である毎月15トン製造するために総力をあげ始めたことと、近隣のリゾートホテルとの協働です。
バイトーン農協には、幹部たちと、テラ・ルネッサンスの事業で育成している若い6名の職員がいます。幹部たちは、農協設立当初からボランティアのようにほぼ無償で活動してきました。しかし、幹部たちが高齢化してきたことから、農協の持続的な運営のために若い人材を育成することにしました。
ただし、働き世代の若い人材は給与がないと活動が続けられません。そのため、若い職員たちには事業期間中は給与を支払っています。そして、事業実施期間である3年間で、農協の活動収益から自分たちの給与を賄うことを目標としてきました。これにより、事業終了後には持続的に農協が運営され、地域の生活向上に貢献し続けることを目指しています。
ところが、収益化までの道のりはまだまだ遠いうえに、農協職員たちはあまり危機感がない様子。そこで、まずは現状を知ってもらうため、4月末に「財務会議」を開催し、現状の収益、目標とする収益、それを叶えるための施策を話し合いました。
結果出てきた方針がこの2つ。
1)収益性が高く需要も安定しているコンポストを、現在の約10倍である毎月15トン製造・販売する。
2)家畜の販路を拡げて、安定的に販売する。
そうと決まれば、あとはひたすらやるのみです。
あらゆる手を尽くして、コンポストを作るための牛糞とヤギ糞を集めてきました。コンポストを15トン作るには人手が足りないので、農協として初めて日雇いの労働者を雇い、製造を手伝ってもらいました。

【コンポスト作りに重要な役割を果たす、ヤギたち。
ヤギ糞をヤギ飼育者から購入すれば、飼育者の収入にもなる。】
また、ちょうどこの時期に、農協近隣にあるリゾートホテルに日本からのお客さんを案内する機会がありました。その際のリゾートホテルのオーナーたちとの出会いが、農協に新しい可能性をもたらしました。
バッタンバン州サムロート郡にある「ハピネス・ロングブリッジ・リゾート」は、ビジネス経験が豊富で、地域の農家に貢献したいという想いのあるカンボジア人投資家とオーナーが運営するリゾートホテルです。彼らはすぐに農協の活動に興味を示してくれ、リゾート内のレストランで農協の鶏肉やアヒル肉、豚肉を取り扱ってもらえることになりました。
さらに、農協には「家畜を売りたくても、家畜を集荷して一時的に置いておくための場所がない。そのため、まとまった量を安定供給しなければならないレストラン等からの注文に対応するのが難しい」という課題がありました。
そこで、広い土地を持つリゾートに、少し土地を家畜を置いておく場所として貸してもらえないかと、相談してみました。すると、最初は冗談半分で言ったのですが、観光牧場のようにすればリゾートのお客さんも喜ぶだろうとのことで、快諾してもらえたのです。

【リゾート全図。15ヘクタールという広大なリゾートの土地の内3ヘクタールの土地を、
家畜飼育と有機野菜の栽培のために農協に貸してもらえることになった】
さらに、農協の目玉商品の一つである豚の丸焼きを作ってサンプルとしてリゾートに持っていき、リゾートで提供するための改善点を指導してもらいました。

【リゾートのシェフ(左の女性)との豚の丸焼き試食会】
このような良い出会いもあり、農協の収益化への希望が見えてきました。農協の幹部と職員たちも、リゾートとの協働という新しい取り組みには戸惑いながらもやる気スイッチが入った様子です。
カンボジア国内には、余暇を楽しむためにサムロート地域に遊びにきて、惜しみなくお金を使っていく人たちがいます。村の感覚からすればとても高い価格帯でも、質の高いサービスであればお金を払う人がいるということ自体が、農協幹部や農協職員たちにとっては全く新しい世界との出会いです。
そしてそのような層を相手に質の高いサービスを提供しながらも、地域に貢献する意思のあるリゾートのオーナーたちとも出会うことができました。彼らとの協働を進めながら、ビジネスの進め方を学んでいけば、農協が事業終了後に収益によって自走することも十分可能です。
事業終了まで半年。出来ることは全てこの数ヶ月でやらなければなりません。農協が持続的にサムロート地域で運営され、地域の生計向上に貢献し続けられるよう、引き続きサポートをしていきます。
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記事執筆
海外事業部 カンボジア事業
津田理沙