【タイ】現地にあるものを活かし命をつなぐ。メラ難民キャンプ医師派遣支援
こんにちは!タイ事務所の伊藤です。
4月から開始した、タイ・ミャンマー国境沿いのメラ難民キャンプにおける医師派遣支援。現地に派遣している医師のゴン・セン・ウー先生からレポートが届きました。
キャンプ内の病院では、小児外来や一般外来をはじめ、心臓や血圧の病気、発熱・マラリア、歯科、心のケア、妊産婦・乳幼児健診など、住民の健康を守るための包括的な診療を行っています。
6月の1ヶ月間だけでも、外来で計5,594件の診察を行い、330人の患者さんが入院しました。これらのケアを、ゴン先生を含めた3名の医師と現地の医療スタッフで分担しながら対応しています。


デング熱の急増と、現場の工夫で挑む医療
タイでは本格的な雨期となる6月、キャンプ内で蚊が媒介するデング熱の感染が急拡大しました。5月は9件だった感染者数が、6月には70件へと一気に増え、現場での対応に追われています。
キャンプ内の病院では、自動で血液検査をする機械や十分な検査キット、点滴の量を自動調節する機械などはありません。そうした資源が限られた環境の中で、医療チームは手作業と現場にあるもので工夫を重ねながら対応を続けています。例えば、デング熱や小さな子どもへの点滴は、量が多すぎると心臓や肺に水が溜まり命に関わるため、手動で1滴ずつ落とす速度を調整して、看護師が1時間ごとに確認しています。

デング熱患者の急増で病棟は非常に慌ただしい状態が続きましたが、手作業での細やかな観察や点滴管理、そして必要に応じた迅速な連携病院への転送を徹底した結果、6月中にデング熱で亡くなる患者さんを出さずに対応することができました。
救急チームの連携で救われた命
ある日の夕方、意識を失いけいれんを起こした40歳の女性が、病院に運ばれてきました。
彼女は7歳の娘さんと見習い僧の息子さんを持つシングルマザーでした。到着時、彼女の意識レベルは命の危険があるほど低く、喉や肺にタンが詰まり、呼吸が止まりかけている状態でした。
医療チームは直ちに気道を確保し、酸素マスクで大量の酸素を送り込みました。チームの迅速な対応により、彼女はまもなく意識を取り戻しました。
意識が戻った後の問診で、持病の喘息薬を誤って大量にまとめて飲んでしまっていたことが判明しました。解毒薬の投与と点滴を行い、命の危機を脱することができました。
翌朝の回診で、彼女はベッドの上から笑顔を向けてくれ、お見舞いに来ていた息子さんに「先生がお母さんの命を救ってくれたんだから、お礼を言いなさい」と話したそうです。
この日の出来事について、ゴン先生は「設備が限られる現場で、回復した彼女の笑顔を見ることができ、医療チーム全員の苦労が報われた瞬間でした」と話してくれました。
ゴン先生から皆さまへ
現場で奮闘するゴン先生から、感謝のメッセージが届いています。
「皆さまからのご支援のおかげで、過酷な環境で暮らす家族へ必要な医療を届けることができています。私が赴任する前、現場の医療チームは限界を超えており、時間や人手が足りずに患者さんを断らざるを得ないこともありました。
しかし、医師が加わったことで待ち時間が大幅に減り、一人ひとりに丁寧な診察を行えるようになりました。夜間の緊急対応も可能になっています。私たちが治療するすべての患者さんを代表して、この活動を支えてくださっている皆さまに心より感謝申し上げます。」

設備や物資が十分ではない難民キャンプの医療現場ですが、スタッフや住民たちが現地にあるものを活かし、互いに協力し合いながら日々を過ごしています。
皆さまからのあたたかいご支援により、現地に医師を派遣し、こうして命を守る活動を継続することができています。いつもありがとうございます。
記事執筆/
国際運動推進部タイ事業担当
伊藤あかり



