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心が灯るまで。vol.01_メイ・ソーンさん

〜わたしの灯火も、きっと誰かの灯火へ。〜

本シリーズでは、『冬の感謝月間2020』において、「支援の先にいる『ひと』の自立に向けた歩みをお伝えすることが今の社会に私たちができることだという考えのもと、アジア・アフリカの活動地にいる人びとの歩みを紹介いたします。

シリーズ第一回の今回は、カンボジアで当会とともに農業や家畜飼育に励むメイ・ソーンさんの「灯火」を紹介いたします。

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写真:メイ・ソーンさん

 

カンボジア、バッタンバン州の活動地で、私たちが関わるメイ・ソーンさんは、家畜銀行で鶏とヤギの貸し出しを受け、現在も家畜を飼育しています。また、モデル農家として、他のメンバーの皆さんに養鶏について教えもらうこともあるほど、訓練に熱心に参加してくれています。現在では、近所の人に鶏のうまい飼育の仕方を聞かれたり、薬草の使い方を教えてあげるなど、頼りになる存在です。

 

そんなソーンさんですが、ここまで来るまでには、地道に積み重ねてきた努力がありました。

紛争被害者として生きる


メイ・ソーンさんは、孫と奥さんの3人で暮らしています。

 

地雷事故にあったのは1996年。

カンボジアがまだ戦争していた時代です。ソーンさんは、戦場の最先端から帰る途中に地雷を踏み、左脚の膝から下を失いました。

 

初めて出会った時のソーンさんは、精神的に塞ぎ込んだ状態で、お酒を大量に飲んだり、何かをするあてもなく、友達と出歩いたりして、日々を過ごしていました。

そんな状態のため、もちろん、仕事もなく、奥さんが日雇い労働をすることでなんとか日々を生きていましたが、家族の生活も、心もバラバラな状態がずっと続いてました。

できる仕事があること、そして心の変化

テラ・ルネッサンスは2017年に支援を始め、ソーンさんは、1年目は養鶏訓練と、鶏5羽の貸し出しを受けました。3年経った現在、今年3月以降だけで75羽の鶏を販売し、US$725(日本円で約7万5千円)収入を得ることができています。
 
2年目には、ヤギの貸し出しを受けました。そちらでも今ではUS$1,000(日本円で約10万円)の収入になり、水がある雨季には、野菜栽培からも毎日US$2.5(日本円で約260円)の収入があります。
 
*バッタンバンでは、0.5USDで缶ジュースが一本買えるくらいの物価です。
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写真:訓練で教わった薬草の発酵液を使った養鶏で、鶏の飼育ができるようになったソーンさん

  

ソーンさんは、「自分で毎日できる仕事ができて、とても嬉しかった。」と語ってくれました。

 

仕事を始めてから、だんだんお酒を飲む量も少なくなりました。出稼ぎに行っていた奥さんも家で家畜飼育や野菜栽培を手伝ってくれるようになり、幸せを感じられるようになったといいます。

 

ソーンさんの変化を見ていた、事業担当のスタッフはいいます。

 

“今でも覚えているのは、2017年の事業1年目の鶏飼育訓練のときのソーンさんの様子。訓練の休み時間や訓練が終わった後も、農業専門家と話し込んでいました。”

 

実はソーンさんは、最初は訓練の内容に半信半疑だったそうですが、習ったことを実践していくうちにその効果がわかり、熱心に訓練に参加するようになったそうです。

 

そこで、事業2年目、3年目には、モデル農家として、養鶏がうまくいかない人たちに、養鶏について話をしてもらいました。ソーンさんの話で他の村人も助かると同時に、周りの人の役に立っているという事実が、ソーンさん自身にも、自信を与えたのではないかと思います。

 

ただ、それだけで終わらないのが探究心旺盛なソーンさん。自分で試行錯誤して養鶏や家庭菜園に取り組み、近所の病気になっている鶏を治療してあげたり、また発酵液を自分で製作して、近所の人にも分けてあげたりしていました。

 

すると、近所の人びととのコミュニケーションが活発となり、お返しにスイーツや飲み物、フルーツなどをくれるようになりました。

  
内なる変化がすべての変化のはじまり
家畜飼育や家庭菜園を始めたことが、ソーンさん自身の変化をもたらし、家族やご近所さんにと良好な関係にまでつながりました。もちろん、このことはソーンさん自身がコツコツと重ねた努力のおかげです。
 
そしてこのつながりは、テラ・ルネッサンスが目指す「自立」の一つの形でもあります。
 
収入源を増やし、多様な拠り所を持つこと。
 
鶏やヤギ、野菜が採れるようになったことで、ソーンさんや奥さんは日雇い労働に行かなくてよくなりました。訓練に家畜飼育と、目の前の仕事に取り組むようになったソーンさん自身の変化。その内なる変化が、バラバラだった家族がひとつにし、ご近所の人ともコミュニケーションが取れる変化を生みだしたのです。
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写真:バッタンバン州農林水産局の職員が視察した時の様子(写真左から2人目、白いシャツの男性がソーンさん)
 

困難にぶつかっても、柔軟に対応するチカラ

「自立」への道のりを確実に歩んでいるソーンさんですが、現在も、困難は降りかかります。
 
 例えば、今年の1月に、隣人が散布した農薬で、鶏が大量に死んでしまいました。さらに、10月の大洪水では、バッタンバン全体が大きな被害に遭い、ソーンさんもトウモロコシやキャッサバが被害を受けてしまいました。
 
しかし、ソーンさんは諦めることなく、生き残った数羽の鶏を繁殖させ、増やしているところです。農作物も、洪水の水が捌けるのをまって、栽培を再開する予定です。
 
困難を受けても、あきらめず、すぐに前を向いて立ち上がる力強さ。
そして、ソーンさんのこれまでのあゆみ、常に新しいことを学ぼうとする姿勢を見ていると、「自立は決して不可能ではない」という確信、背中を押してもらえるような心強さを感じます。
 
何よりも、今、自分にできることをするその熱意が、私たちの、そして周りの人びとの心をも明るく灯しています。そしてその灯りも、きっと、また次の誰かへとともされていくのだろうと思います。
 
事実、ソーンさんはあんなに素晴らしい笑顔で、自分の身に付けた経験を周りに伝え、貢献しているのですから。
 
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写真:椅子に座っている男性がソーンさん。モデル農家として養鶏のコツを他のメンバーに教えている様子
 

社会の”灯火”を育む a7-y_czq79o1asb6obu8t6d5r_myl82z.jpg

2020年という一年は、国も立場も関係なく、全ての人が新型コロナウイルス感染症の影響を受けた時間でした。

 

そして現在、コロナ禍による漠然とした不安が、日本全体を覆っているように思います。

 

ソーンさんの「自立」への歩みは、目の前のことにコツコツと取り組み、周りとの関係性をも変化させていく姿でした。コロナや洪水の困難にあっても、「自立」をあきらめず、歩みを止めない熱意は、私たちの心に灯火を与えてくれました。

 

『わたしの灯火が、また誰かの灯火になる。』

 

あなたが心に宿した灯火が、また誰かの灯火につながっていく。その灯火の広がりは、いつか大きな光となり、太陽のように社会を明るく照らしていく。そう私たちは信じています。

 

この冬、テラ・ルネッサンスは、『冬の感謝月間2020』として、ソーンさんのような物語を、支援者の皆さまが託される想いを、テラ・ルネッサンスのメッセージを、社会へ発信していく、特別な”期間”をスタートすることにしました。 

 

このページでは、私たちの想いを綴っています。ぜひご覧ください。そして、皆さんの想いも、ぜひカタチにしていただければ幸いです。

 

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