声ひとつが、場を、人を、世界を変える
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——株式会社ワタナベ美装 代表取締役社長 渡邉真規さんインタビュー
取材日:2026年1月7日 取材場所:株式会社ワタナベ美装(京都市山科区)

取材当日、玄関に手書きで用意されていた歓迎ボード
京都・滋賀を中心にビルメンテナンス事業を展開し、創業から半世紀以上の歴史を持つ株式会社ワタナベ美装さま。清掃・環境衛生・設備管理からハウスクリーニング、内装工事まで、建物に関わるワンストップサービスを手がける同社が大切にしている言葉があります。
「関わる全ての人を『笑声(えごえ)』で幸せにします」
お客様のために、スタッフのために、地域のために——その思いを軸に組織文化を育んできた渡邉真規社長は、テラ・ルネッサンスの法人サポーターとして、そして現在は理事として、活動を内側から支え続けています。社会への支援を「投資」と言い切る渡邉さんに、ワタナベ美装の哲学と、テラ・ルネッサンスへの想いをお聞きしました。

「笑声」の書の前で。渡邉社長(左)と鈴木(右)
一言で言うと、「声」
インタビューが始まるやいなや、渡邉社長は迷わず答えました。
「うちは一言で言うと、声。それ以外ないですね」
「笑声(えごえ)」——笑顔と分かる声のことです。清掃スタッフとして現場で働いていると、作業中に「お疲れさまです」「ありがとう」と声をかけていただく機会が多くあります。通り過ぎたお客様が振り向いて声をかけてくださることもある。顔が見えなくても笑顔だとわかる声——それが「笑声」です。
しかし渡邉社長が言う「声」は、挨拶の技術にとどまりません。
「声っていうのは、顔の声なんです。常にそういう心持ちでいられるように、心を整えると か、人に対してそういう関係性を作るとか——そんなひっくるめての声なんです。」
取材の場で「心が笑顔になると、声も笑顔になる」という言葉が生まれました。渡邉社長は「それ使いますわ」と声を上げて笑い、その言葉の正しさを改めて確かめるように頷きました。

事務所に飾られた「笑声」の書。金地に墨の筆跡が力強く映える
一歩を踏み出した、あの忘年会
どの組織にも、転機となった瞬間があります。ワタナベ美装にとって、それはいつ訪れたのでしょうか。
「一番はですね、創業者が亡くなった、その年です」
それまで忘年会を開いたことがなかった同社が、創業者の逝去した年に初めて社員を集め、初めて表彰を行いました。
「そのときの感覚が——何か会社がやっぱり変わってくる、第一歩を踏んだみたいな、そんな感じがありましたね」
大きく何かが変わったわけではない。それでも渡邉社長の胸に残ったのは、「ようやく一歩踏み出せたな」という静かな確かさでした。「その一歩がめちゃくちゃ大事なんだ」と語る言葉には、その後の組織づくりを支えてきた実感が滲みます。
表彰は今も続いています。「めっちゃ喜んでくれる方もいる」と、渡邉社長は温かく話します。継続してきたことそのものが、組織の土台になっています。
「笑声」という理念が生まれるまで
「笑声」という言葉が理念の核になったのは、ある月の目標設定がきっかけでした。「挨拶は目と目を合わせて声ですよ」という言葉を、一人の社員が見つけてきた。1ヶ月の目標として掲げてみると、終わらせるのがもったいないと感じるほど組織の中に根付いていきました。それならば、このまま続けようと。
「笑顔」ではなく「声」という言葉を選んだことにも、意味があります。
「笑顔じゃなくて、声っていう響きが良かったような気もしますね」
理屈ではなく、感覚として腑に落ちた言葉。その直感を大切にしたことが、今に続く理念の核心となりました。当時は社内に笑顔が少なかった時期でもあり、だからこそ「笑声」という言葉が持つ力が、スタッフ一人ひとりの心に届いたのかもしれません。
理念が、チームを育てる
現在、約140名のスタッフが働くワタナベ美装。渡邉社長の見立てでは、「笑声」を体現できているスタッフはおよそ45%。残りの55%はまだ発展途上にあるといいます。ただ、その数字を嘆く言葉は出てきませんでした。
「採用の段階で、社員がうちの理念に合う人を見てくれるようになってきたんです。ここ10年ぐらいは本当に、採用のときにそういうところを重点的に見てくれている」
結果として、現場のチームに「すごく仲の良いチーム」が生まれてきました。社内レクリエーションに家族や子どもを連れてくるスタッフがいる現場は、例外なくそういった一体感のある職場だといいます。
理念は、トップから押しつけるのではなく、採用という「入口」から組織の中に静かに浸透していく。その息の長い文化づくりが、ワタナベ美装の強さの源にあります。

インタビューは和やかな雰囲気の中、およそ40分にわたって行われた
「優しい組織には、優しい人が集まる」
テラ・ルネッサンスをご支援いただいている理由についてお聞きすると、渡邉社長はこう答えました。
「本当に、人の良さと誠実さ——それに尽きるんですけど」
ウガンダを実際に訪れた際の印象も、その確信を深めたといいます。「優しい組織には優しい人が集まる」——現地でそれを肌で感じたと語ります。
特に響いたのが、テラ・ルネッサンスの支援のかたちでした。食料を届けるだけ、物資を支給するだけの支援とは異なる、と渡邉社長は言います。
「支援するだけのとこも多いじゃないすか。ただそれだけやと、そこの人たちって変わらないし、逆に依存してしまうこともある。
そうじゃなくて、それぞれの人たちの自立を考えてやられてる——そこが、支援の素晴らしさとして一番感じるところですかね」
「生きる力を引き出している」——テラ・ルネッサンスの活動をそう言い表しました。それはワタナベ美装が自社のスタッフに対してやろうとしていることとも、深く重なっています。
理事として見た、テラ・ルネッサンスの内側
現在、テラ・ルネッサンスの理事を務める渡邉社長に、組織の信頼性とスタッフの魅力についてお聞きしました。
「皆さん、優秀ですね。仕事も早いし、物事の進め方も早い。理念のもとにそれぞれがきちんと判断基準を持って、役割を認識してやっているなという感じがします」
特に印象的なエピソードを語ってくださいました。ある職員研修でのこと、職員の一人が最後にこんな言葉を口にしたといいます。
皆さんからいただいたご寄付を1円も無駄にしない
「本当に皆さんからの支援をちゃんと現場に生かしていくっていう、そういうところの思いがすごく強いなと思いましたね」
スタッフの明るさも、特筆すべき魅力として挙げられました。女性スタッフが多く活躍するテラ・ルネッサンスについて、「女性がやっぱり一定数頑張っている組織って、いいですよ」と渡邉社長は話します。「大変なときに明るくなれるっていうのは大きい」という言葉は、率直な賛辞でした。
寄付ではなく、「投資」である
「企業が支援を続ける意義は何か」という問いに、渡邉社長は一言でこう答えました。
「僕は寄付とは思っていなくて、投資だと思っているんですよ」
この言葉は、単なる表現のあやではありません。支援先を決める際には、その団体の活動をきちんと確かめ、お金がどのように使われるかを見届ける。納得できる活動にしか支援しない。それが「投資家としての責任」だと考えています。
「ちゃんとした寄付というのは、ちゃんとした活動で、自分たちが寄付したものがどう使われていくか、そこの団体の人柄を見て、ちゃんと投資をするということですね」
そして、こう続けます。
「世の中が良くなると、結局事業も変わらないですよ。いい活動をしてくれているところが増えると世の中が良くなって、僕らの事業も持続可能になっていく。
だから投資家ですね——どこに投資するかという」
社会をよくすることは、事業を続ける土台そのものであり、切り離して考えるものではない。最終的に渡邉社長が行き着いた言葉は、「人の心に対する投資」でした。

「人の心に対する投資」と語る渡邉社長のその声は、とても穏やかでいて、とても力強いものだった
道具が変わっても、声は残る
AI・デジタル化が進む時代における「声」の価値についても、お聞きしました。
「ただ単に清掃をするというサービスを提供するんじゃなくて、我々のスタッフがそこで働くことによって、その場を明るくしている。そこの人たちの活気が出る——そこまで持っていければ、と思っています」
ロボットが清掃作業を代替していく未来は、すでに見えています。しかし渡邉社長は、それを脅威としてではなく、人の仕事の本質を問い直す機会として捉えているようです。
「うちの人が行くと元気がもらえて、生きる活力みたいな、働く喜びみたいなものが感じられる——それはAIにはなかなか置き換えられないんじゃないかな」
テラ・ルネッサンスが紛争地域の現場で「生きる力を引き出す」活動をしているように、ワタナベ美装が清掃の現場で「場を明るくする」仕事をしているように——「人であることの価値」は、技術がどれだけ進んでも変わらないはずだと、渡邉社長は語ります。
テラ・ルネッサンスへの期待と、これからの展望
インタビューの最後に、テラ・ルネッサンスへの期待についてもお聞きしました。
「政策提言——そこも、本当にテラルネが担っていく役割なんだろうなと思っているんです」
現場での支援と並行して、政策への働きかけを通じた社会変革。数年前から力を入れ始めているこの取り組みを、渡邉社長は大きな期待とともに見守っています。また、テラ・ルネッサンス・インターナショナルとして国際的な活動基盤を広げていく動きについても、「本当に世界平和に近づいていくんじゃないか」と、温かい眼差しで語りました。
そして、まだテラ・ルネッサンスを知らない企業の方々へのメッセージを求めると、こう答えました。
「まず、知ってほしいです。知らないものというのは、世の中に存在しないんです」
知ることが、すべての始まりです。まずはオンラインイベントでもいい、ぜひ一度聴いてほしい——渡邉社長はそう語ります。「笑声」を理念に掲げる組織が、世界を変えようとしている活動に投資を続けている。その事実もまた、一つの力強いメッセージです。
取材協力:株式会社ワタナベ美装 代表取締役社長 渡邉 真規
京都・滋賀を中心に、ビルメンテナンス(清掃・環境衛生・設備管理)、ハウスクリーニング、内装工事など建物に関するワンストップサービスを展開。約140名のスタッフが働く。
ウェブサイト:https://www.k-wb.co.jp/
テラ・ルネッサンスは、法人サポーターの皆さまとともに、世界各地で「人が人として生きられる社会」の実現に向けて活動を続けています。渡邉社長のように、社会への支援を「投資」として捉え、長年にわたり活動を支えてくださるパートナーが、私たちの活動を前に進める大きな力となっています。



