【企業インタビュー】「調達の先」に立つ視座
── 秋田発・ものづくり企業、紛争鉱物と向き合うまで
取材日:2026年7月28日 取材場所:YURIホールディングス株式会社
取材・文:鈴木竜太(認定NPO法人テラ・ルネッサンス 啓発事業部)
YURIホールディングス株式会社(秋田県由利本荘市)は、電子部品製造、精密機械加工・装置製造、基板実装(EMS)を中心とした「ものづくり事業」を展開するグループ企業です。スマートフォンや自動車、医療機器、航空機などに不可欠な高精度部品の製造から、精密洗浄・二次電池受託試験といった「ソリューション事業」まで手掛け、高い技術力と総合力で先進産業の発展を支えています。由利工業・秋田精工・横手精工・由利電子部品など複数のグループ会社を束ね、「創造によって地域社会に貢献する」を理念に掲げながら、地域に根差しつつグローバルな視野で持続可能な未来づくりに挑んでいます。
代表取締役の須田哲生さんが認定NPO法人テラ・ルネッサンスと出会ったのは、今から10年ほど前のこと。秋田市での一つの講演会がきっかけでした。以来、法人サポーターとして支援を続け、地域の法人サポーターの会・テラルネ後援会秋田では会長も務めています。電子部品というものづくりの現場が、紛争鉱物という世界的な課題とどうつながっているのか。そして、その気づきが会社や社員にどんな変化をもたらしているのか。須田さんに伺いました。

1 鬼丸さんの講演で、知ってしまった
―――テラ・ルネッサンスと出会ったきっかけを教えてください。
須田さん:
10年近く前になると思います。秋田市の文化会館で鬼丸さんの講演の機会があって、経営者仲間の先輩から声をかけられて、行かせていただいたのが最初のきっかけでした。
お話を聞いたとき、正直びっくりしました。子ども兵にされてしまった少年の話や、離れ離れになった母子の悲しい話を聞いて、そういう世界があるということに、まず驚きました。
それまでテラ・ルネッサンスという団体の存在すら知らなかったんです。誘われるまま行ってみたら、「なんだ、この話は」と。それが、最初の出会いでした。

2 「ちゃんと調達されていますか」──紛争鉱物という視座
―――講演の後に、鬼丸さんから直接お声がけがあったそうですね。
須田さん:
そうなんです。講演の後に、鬼丸さんからメッセンジャーか電話で「須田さんのところ、電子部品を作っていますよね。材料の調達はどうされていますか」と聞かれたことがありました。うちはレアメタルなど材料の調達にも間接的に関わりがあります。
それまでの私たちの視点といえば、正直「決められた作業標準どおりにしっかりと製品を作り、お客様にお届けする」というものでした。それまでも、環境破壊につながっていないかという「グリーン調達」の視点はあったのですが、鬼丸さんの質問は、そこにもう一段、エシカルというか倫理的な調達という視点があることを教えてくれたんです。
早速、仕入先に確認したところ、調達自体に問題はなかったことが確認できました。その上で、紛争鉱物というものが電子部品を扱う自分たちの仕事にもつながっているんだと気付けたのは大きかったですね。アフリカの資源をめぐる話は、遠い世界の出来事ではなく、実は自分たちの業界とも地続きだったんだと。そういうピースがつながっていく感覚がありました。
3 2018年から法人サポーターになった
―――法人サポーターとして支援を始められたのは、いつからだったのでしょうか。
須田さん:
鬼丸さんの講演を聞いた後、2018年から法人サポーターにならせていただきました。自分で現地に行って何かの活動できるわけではありませんから、支援というより応援(仲間の感覚)という形で関わりを持てる事がとても有り難かったです。
―――地域の法人サポーターの会・テラルネ後援会秋田では、会長も務められていますね。
須田さん:
実は、地元で大変お世話になっている経営者の方から、「今度秋田に、こういう場ができますよ」とお声がけいただいたのが始まりでした。前々からそういう構想があるとは伺っていて、皆さんがテラ・ルネッサンスの活動に共鳴して、盛り上げていこうという話でした。
会長を、と言われたときは、正直「自分でいいんですか?」という気持ちでした。周りには大先輩の経営者の方々がたくさんいらっしゃいますから。ただ、こういう会は年功序列で少しずつというより、立ち上げのタイミングで一気に決まるものだと思いますし、頼まれてしまえば、もうやるしかないですよね。

4 「自分ごと」に、少しずつ──社内への広がり
―――社内では、テラ・ルネッサンスのことをどのように伝えていらっしゃいますか。
須田さん:
社内SNSを使って、自分の想いを綴ったことがあります。テラ・ルネッサンスの活動と、私たちが大切にしている「働く幸せ」という考え方には、人を大切にするという共通点があると感じて、そのことを書きました。
以前から、幹部社員に鬼丸さんのお話を聞いてもらう機会を設けています。ただ、社員一人ひとりが「自分ごと」として受け止められるようになっていくのは、まだまだこれからだと思っています。
―――社員の方々に、もっと自分ごとになってほしいという思いがあるのでしょうか。
須田さん:
そうですね、それはあります。ただ、そこを急にやってしまうと、なかなか難しい部分もあります。一人ひとりの想いを大切にしたいと思っていて、手段と目的を履き違えない、というところは、いつも意識しています。
いま向かっているのは、まさにその途中です。1回きりで変わるようなものではなく、1日にして成らず、という長い旅なのだと思っています。
―――そのような関わりの中、社員の方々に変化は見られますか。
須田さん:
(アフリカでの紛争や子ども兵などの)そういう状況を知らない、ということ自体に気づいてもらえるだけでも大きいと思います。調達だけでなく、品質などの面でも、もう一段深いところに視座を持つことの大事さを、感じてくれているのではないでしょうか。今は、法人サポーターとしての寄付だけではない立ち位置から仕事をする、社会と関わるという意識が、少しずつ変わってきていると思います。
直近では、法人サポーターを通じて台湾で知り合った方々から、本当に大きな刺激をもらいました。県内の法人サポーター同士のつながりもそうですし、関わっていく中で、新しい学びがどんどん出てくる、という感覚があります。

5 意外に近い、身近だということ
―――ものづくりの業界全体として、紛争鉱物という問題はどう受け止められているのでしょうか。
須田さん:
正直、まだまだこれからだと思います。日本は資源のない国ですから、どうしても経済合理性だけで判断してしまいかねない環境にあります。そこは、外圧ではないですけれど、何かしらのきっかけが必要なのかなと思います。
―――今後、テラ・ルネッサンスと一緒にやってみたいことはありますか。
須田さん:
私自身、支援をしているというよりも、テラ・ルネッサンスとの関わりを通じて、いろんな気づきやお知恵をいただいている、という感覚があります。
そんな中、法人サポーターの活動を通じてご縁をいただいた、台湾の方々との交流にとても興味があります。今以上に交流が広がっていくと面白いなと思っています。ただ、それが事業につながるかどうかは目的ではなくて、そういうキャッチボールを大事にしたいと思っています。
また、社内などで実際にすずりゅうさんや鬼丸さんに、改めてあらためてお話しいただく機会も考えたいです。
―――最後に、テラ・ルネッサンスのことは知っているけれど、まだ関わりのない経営者の方々に、メッセージをお願いします。
須田さん:
世界は、思っているより意外に近い、身近なものです。それを知ると、人生観というか、仕事との関わり方も変わってくると思うんです。これは、テラ・ルネッサンスに関わっていなければ、なかなか持てない視点だと思います。そんな機会に、一度触れてみていただきたいなと思っています。
──ありがとうございました。

取材後記
私自身も、2017年に鬼丸と出会い、当時、国内だけではなく世界中で大人気流だったゲーム機を通じて、実はアフリカ諸国の紛争鉱物問題とつながっていたという話を聞き、大きな衝撃を受けた一人です。須田さんのお話を伺いながら、業界も世代も違うところで、同じように「知ってしまった」瞬間に出会うことがあるのだと、あらためて感じました。
「作ってお届けする」という視座が、調達の先にある世界にまで広がっていく。その変化を、ご自身だけでなく社員の皆さんにも少しずつ広げていこうとする須田さんの姿勢に、法人サポーターという関わり方の奥行きを感じました。台湾との交流やこれからの展開についても楽しそうに語ってくださり、「支援している」というより「気付きをもらっている」という言葉に、その本質が表れていたように思います。
プロフィール
須田 哲生(すだ・てつお)|YURIホールディングス株式会社 代表取締役
2015年設立のYURIホールディングス株式会社(秋田県由利本荘市)代表取締役。由利工業・秋田精工・横手精工・由利電子部品などのグループ会社を束ね、電子部品製造・精密機械加工・基板実装(EMS)を中心とした「ものづくり事業」と、精密洗浄・二次電池受託試験などの「ソリューション事業」を展開する。「創造によって地域社会に貢献する」を経営理念に掲げる。地域の法人サポーターの会・テラルネ後援会秋田(2022年頃発足)会長も務める。
取材・文:鈴木竜太(認定NPO法人テラ・ルネッサンス 啓発事業部 ファンドレイジングマネージャー)
※掲載内容は取材当時のものです。



