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【企業インタビュー】「おせっかい」が組織を変え、世界とつながる

——物流グループが対話に賭けた理由、そしてテラ・ルネッサンスとの歩み

 
取材日:2026 年 1 月 21 日 取材場所:つばさホールディングス株式会社
取材・文:鈴木竜太(認定 NPO 法人テラ・ルネッサンス 啓発事業部)

 

東京・立川を拠点に、物流グループのホールディングス経営を担うつばさホールディングス株式会社。同社の代表取締役・猪股浩行さんはこう語ります。「『利他を運んで、想いを届ける。』というパーパスのもと、本質的には物流会社ではなく、人を育てる会社でありたいと思っています。物流はそのための事業であり、仲間が成長し、その先にお客様や社会への価値提供があると信じています」
 
1973年の創業以来、現場の人たちとともに事業を育ててきた同社は、約3年前から認定NPO法人テラ・ルネッサンスの鬼丸昌也が主導する対話研修を導入し、グループの垣根を越えた組織文化づくりに取り組んできました。「潜在的なニーズを引き出すこと」を「おせっかい」と呼び、現場への愛情を組織の力に変えてきた同社が、なぜテラ・ルネッサンスと歩むのか。代表取締役の猪股浩行さんと経営管理本部長の秋山賢太郎さんに、対話がもたらした変化と、企業とテラ・ルネッサンスとの関わりについて伺いました。

 

 

1. 「事前期待を超えるおせっかい」── 潜在的なニーズを引き出す力


 
———以前のミッションに「事前期待を超えるおせっかい」という言葉がありました。単なる親切との違いを教えていただけますか。
 

秋山さん:

「事前期待を超えるおせっかい」とは、潜在的なニーズを顕在化することだと考えています。例えば、困ってはいるけれど、それをうまく言語化できない人がいたとします。立場やレイヤーが違う中で、そこを先回りして手を差し伸べ、「こういうことだったんだ」と気づかせてあげる。それが、事前期待を超えることにつながっていると思います。

 
本当のおせっかいとは、相手の可能性を信じることだと思うんです。目の前の課題だけではなく、その人が一年後、五年後にもっと成長できると信じるからこそ、一歩踏み込んで声を掛けられる。それは単なる「親切」ではなく、人を育てることそのものだと思います。

 

猪股さん:

答えって、一つじゃないと思うんです。論語を20年、30年読み続けていると、そのときは「知ってる、知ってる」となる。でも知っているのと、本当に理解できているのとは、全然違う。

 
温かいおせっかいって何かというと、そのとき気づかなくても、後になって「なるほど、こういうことを言いたかったんだ」とわかること。親によく言われていたことが、今になってやっとわかった——そんな感覚に近いかもしれません。

 
一歩踏み込むときに「嫌われるかな」「余計なお世話だって言われるかな」と自分軸で考えるんじゃなくて、相手のためを思って勇気を持って踏み込む。それが単発的に終わるんじゃなくて、バトンを送っていくような——そういうのが、温かいおせっかいなのかなと思います。

 

———新入社員の庄司さんから見た「事前期待を超えるおせっかい」はいかがでしょうか?
 

庄司さん:

現場の人が求めていることを、「困ってます」と言い出す前に先回りしている。それが、つばさホールディングスなりの「おせっかい」なのかなと思っています。
 

右から猪俣氏、秋山氏、鈴木(テラ・ルネッサンス)

  

2. ハラスメントの時代に、まず「目的」を問え


 
———ハラスメント対策が叫ばれる昨今、管理職が萎縮してしまうという声も聞きます。お二人はどのようにお感じでしょうか。

 

秋山さん:

私が金融機関にいたとき、夕方にコンプライアンス研修があって「パワハラ・セクハラは絶対やるな」と言われました。翌朝の営業会議で、成績の悪い社員が死ぬほど詰められていた。10時間前にあれだけ言われていたのに、という体験があります。

 
世代によってボーダーラインが違う中で、その基準を合わせることはものすごく難しい。だからこそ、対話を重ねながら相互理解を深めていく機会が、絶対に必要だと思っています。

 

猪股さん:

ハラスメントであるかないかよりも、「目的は何か」を考える方がいいと思うんです。「これを何のために伝えようとしたのか」「伝えることでどうしたかったのか」が抜けたまま、やり方だけに意識が向いてしまっている。

 
相手の尊厳や人格を尊重するという意識があれば、そういう言葉は自然と出てこなくなるはず。目的が明確になれば、どういう言葉を使うべきかも変わってくる。意識して排除していかないと、無意識のうちに必ず出てしまう言葉がある。だからこそ、「何のためか」を常に問い直すことが、今の時代には必要なんじゃないかと思います。

 
そして何より、厳しさの反対は優しさではなく、無関心だと思うんです。本当に相手を大切に思うから伝えるのか、それとも感情をぶつけているだけなのか。その違いが最も重要で、そこに「目的」と「愛情」の両方が揃って初めて、人は動き始めると思っています。

 

3. 対話研修 3 年間の軌跡 ──参画意識と主体性が育まれるまで


 

———テラ・ルネッサンスの鬼丸昌也による対話研修を導入されて約3 年が経ちます。導入することになったきっかけは何でしたか。
 

秋山さん:

グループ経営という言葉は使っていても、プレイヤーは私も含めて、拠点や事業会社の間に対立の構造が生まれていて、なかなか一枚岩になれない状況がありました。

 
そこで鬼丸さんに「対話」についてお話いただいたときに、「うちみたいな組織にはこれじゃん!」という腹落ち感があったんです。ちゃんと研修をしていただいて、実際に対話を実践している組織をベンチマークしようと。テラ・ルネッサンスがグローバル人財育成を行っている東明館高校に若手社員と一緒に訪問させてもらったり、学びの機会を重ねてきたのがこれまでの歩みです。

 

———具体的にどのような変化が生まれましたか。

 

秋山さん:

東明館高校で高校生と一緒に学んだ若手社員が、1年間を振り返って言ってくれたことが印象に残っています。「リーダーシップって、役員や役職のある人間が持つものだと思っていたけど、誰でも持てるものとわかった」と。ベンチャースピリットを持っている人間が何人いるかが、組織の強さに直結する。その「一歩踏み出せる」土壌を、1年間の学びの中で少し育むことができた。それは大きな収穫でした。

 

猪股さん:

朝礼の委員会など、いろんな委員会を若い人たちが立ち上げて運用してくれています。誰かが作ったものを動かすのではなく、自分たちが作り上げていくという意識は、格段に増してきました。

 
一番大事なのは、上の人たちが気づいて実行していくことで全体が変わっていく、ということです。気づきから意識変容、行動変容、そして組織が動き始めるまでには、3年くらいかかる。変わり始めてきた、とようやくわかってきた感覚です。

 
まだ道半ばですが、これからは若い世代が会社を変えていく番です。その土台をいま、一緒に作っているところだと思っています。

 

 

4. テラ・ルネッサンスとの共鳴 ──「寄付」でなく「共に育てる」という視点


 
———猪股さんは早くから鬼丸との関わりを持っていたそうですね。テラ・ルネッサンスに研修を依頼しようと考えられた背景を教えてください。

 

猪股さん:

鬼丸さんという人を見たときに、「寄付の講話をしているだけではもったいない」と思ったんです。

 
世界平和というと、遠い話に聞こえるかもしれません。でも私は、一人の人が家庭で笑顔になり、その家庭が地域を明るくし、その積み重ねが社会を変えていくと思っているんです。経営も同じだと思っています。家庭での人間関係が最初の平和。その次がコミュニティ、そして組織。特に「働く」という場で多くの時間を費やす人間関係の中に対話があれば、多くのことが変わるのに、と。

 
会社という組織が良くなれば利益が出て、その利益が社会課題の解決に回る。それが建設的に積み重なっていく方が、一回の講演を聞いて寄付するよりも、よほど世の中が良くなっていくんじゃないか。そういう思いから、鬼丸さんに企業向けの研修をお願いしたいと声をかけたことがきっかけです。

 

———テラ・ルネッサンスと関わることが、企業にとってどのような価値を持つとお考えですか。

 

秋山さん:

利益を出すことの先まで語れる方って、そう多くないと思っています。利益を出すことはもちろん必要で、それを従業員の福利厚生や未来への投資に回すことも大事。でも「未来への投資」が、自社だけに向きがちです。
意志ある出資として、願いや思いも込めて、テラ・ルネッサンスが隣にいることで選択肢が広がる。それは企業にとってとても大きいことだと思います。

 
また、社会課題に関心を持つ世代の採用という面でも、「テラ・ルネッサンスと一緒にこういうことをしています」と言える方が、今の若い方たちには響きやすい。鬼丸さんの話を初めて聞いたとき、「自分にできることがあればやりたい」という気持ちと、「聞かなきゃよかった」という気持ちの、二つの感情が同時にグサッときた。でも多分、その反応こそが正しいんだと思います。放っておけなくなるんですね。

 

猪股さん:

寄付って、お金があって余裕がある人がやることではなく、心が豊かになるために施すもの。それはお金でも、笑顔でも、語りかけることでも。

 
自分が持っているものを人に分け与えようという気持ちが、テラ・ルネッサンスと関わることで生まれてくる。それが人生の豊かさであり、企業の豊かさにも絶対に繋がる。宗教や人種を超えて世界で活動しているテラ・ルネッサンスと関わることで初めてわかること——それはもう、お金では換算できない価値があると思っています。
 

5. サポーターへの一歩———今だからこそ伝えたいメッセージ


 
———まだテラ・ルネッサンスとの接点がない企業の方々に、メッセージをいただけますか。

 

猪股さん:

私は企業の目的は利益を出すことだけではないと思っています。利益を生み、その利益で仲間を幸せにし、社会へ還元し、未来の子どもたちにつないでいくこと。その循環をつくることが経営者の使命です。テラ・ルネッサンスとの歩みも、その一つの実践だと考えています。

 
意外に思われるかもしれませんが、余裕のある方よりも、今まさに切羽詰まっている方にこそ、ぜひ参画していただきたい。なぜそれが有効に働くのかを理解いただけるような気づきが、きっとあるはずです。そういう場面にいらっしゃる経営者さんほど、ぜひ扉をノックしてみてほしいと思います。

 

秋山さん:

いくつになっても、自分の本業とは異なる領域から学ぶことは大切だと、テラ・ルネッサンスとの関わりの中で実感しています。経営論や組織論を学ぶ機会はあっても、テラ・ルネッサンスがやっていることの領域から学ぶ機会は、なかなかない。

 
そして、テラ・ルネッサンスが支援する若い世代が社会に出ていって、一人でも早く社会をよくしようと動いてくれることを応援できる。それが、自分たちが年老いたときも暮らしやすい社会をつくることに繋がっていく。やって損はないんじゃないかな、と心から思います。

 

──ありがとうございました。

 


法人サポーターさまプロフィール
 

猪股 浩行(いのまた・ひろゆき)/つばさホールディングス株式会社 代表取締役
1973年創業の物流グループを束ねる持株会社、つばさホールディングス株式会社の代表取締役。2019年2月に持株会社体制移行を主導し、現在はグループ全体の経営管理を担う。仲間が誇りを持ち、人生を豊かにできる組織づくりと、テラ・ルネッサンスをはじめとする社外団体との連携を通じ、「社会の要請に応え続ける企業」を目指す。東京都立川市を拠点に活動。
 
秋山 賢太郎(あきやま・けんたろう)/つばさホールディングス株式会社 本部長代理
金融機関での勤務を経て、つばさホールディングスに参画。グループ内の対話研修の導入・推進を牽引し、東明館高校との連携プログラムにも積極的に関わる。「利益を出すことの先まで語れる企業」を目指し、社員の主体性と相互依存の文化醸成に取り組む。
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聞き手:鈴木竜太(認定 NPO 法人テラ・ルネッサンス 啓発事業部 ファンドレイジングマネージャー)

※ 内容および出演者の所属・肩書は2026年 1月現在のものです。

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