【ウクライナ支援4年目】希望の拠点を、地域へ。総合福祉センターが完成。
Contents
想定外の改修、深刻な円安、徴兵による人手不足——幾多の困難を越え、日本の支援で「小さな日常」を守る拠点が本格始動。





「建物ができたことで、みんなが喜ぶわけではないんです。」
ウクライナ西部で活動を続ける、テラ・ルネッサンスのコーシャ・バーリン・黎は、そう語ります。
2026年3月30日、テラ・ルネッサンスが建設を進めてきた総合福祉センターが完成し、現地で引き渡し式典が行われました。しかし、このプロジェクトの本質は、「建物の完成」ではありません。

コーシャ・バーリン・黎
■戦争の中で続く“終わらない日常”
テラ・ルネッサンスのウクライナ支援は、2022年3月末、理事長の吉田真衣、事務局長の佐々木純徹、そして現ハンガリー事務所長のコーシャ・バーリン・黎の3名がハンガリー国境からウクライナに入ったことから始まりました。
コーシャは、現地の状況をこう振り返ります。
「想像を絶する状況でした。一度きりの支援ではなく、継続して関わる必要があると、その場で決めました 。」
それから約4年。炊き出しや物資支援を続ける中で見えてきたのは、終わらない困難でした。高齢者やひとり親家庭、働き手を失った家庭、そして年金だけでは生活できない人々。
「必要なのは、明日食べるご飯や、日々の支えなんです 。」


■ 困難を極めた「再生」の道のり
プロジェクトの道程は、古い建物を現代の福祉拠点へと再生させるための、地道で困難な闘いでもありました。
いざ着工すると、屋根は虫食いで全撤去が必要となり、床下には基礎さえもありませんでした。さらに、記録的な円安と戦時下の物価高騰が予算を圧迫し、現場の男性作業員が次々と徴兵されるといった想定外の課題に次々と直面しました 。
周辺国から人手や物資を補給すれば、もっと早く完成したかもしれません。
しかし、テラ・ルネッサンスは外部に頼るのではなく、地元の職人を雇用し続けることにこだわりました。
「20人の地元の人を雇うことは、その家族を含めた100人の暮らしを支えることにつながります 。現地で仕事をつくり、共につくりあげる。それ自体が、私たちの目指す支援の形でした 。」(コーシャ談)
■ 「ハコ」から「拠点」へ:地域とつながり続ける仕組み
完成したセンターは、単なる建物ではなく、地域に根ざした「多機能な支え」の場となります。
・炊き出し(スープキッチン): 敷地内に設置された厨房から、月約80ユーロ(約1.4万円)のわずかな年金で暮らす高齢者や困窮家庭へ、温かい食事を届けます。
・物資の備蓄と配分: 地域の人々が必要な支援を迅速に受けられるよう、物流倉庫としての機能を担います 。
・心のケアと連帯: センター内には礼拝堂や多目的室が設けられ、家族を戦地に送り出した人々が静かに祈り、互いに寄り添い合える空間を提供します 。


■この場所はゴールではなく、共に歩み続けるための「出発点」
式典当日、中庭には日本を象徴する「桜」と、浄土真宗本願寺派からの支援を記念した「藤」が植樹されました 。

コーシャは語ります。
「建物が完成したからといって、私たちの活動が終わるわけではありません。人々の抱える困難に対し、これからも一つひとつのアクションを積み重ねていく。この場所はゴールではなく、ウクライナの方々と私たちがより深くつながり合い、共に未来へと歩み続けるための『出発点』なのです。」
テラ・ルネッサンスは、25年にわたり世界各地で紛争被害者の自立支援を続けてきた日本のNGOです。
過酷な状況にある人々を支えるのは、必ずしも国家の枠組みだけではありません。一人ひとりの市民の想いや、国境を越えた温かい連帯こそが、明日を生きる希望をつくると私たちは信じています。これからも「一人も見捨てない」支援を、ウクライナの地で、そして世界中で続けてまいります。
この件に関するお問い合わせ(取材)について
認定NPO法人テラ・ルネッサンス 広報室
電話 : 075-741-8786
メール : contact@terra-r.jp



