【ウガンダ】心が灯るまで。Vol.2 ~リンダ(仮名)さんの「灯火」~
〜わたしの灯火も、きっと誰かの灯火へ。〜
本シリーズでは、『冬の感謝月間2020』において、「支援の先にいる『ひと』の自立に向けた歩みをお伝えすることが今の社会に私たちができることだという考えのもと、アジア・アフリカの活動地にいる人びとの歩みを紹介いたします。
今回はウガンダの当会の職業訓練施設でマスク作りに励むリンダ(仮名)さんの「灯火」を紹介いたします。

子ども兵の過去を乗り越え、
リンダ(仮名)さんは、9歳の時に反政府組織(神の抵抗軍:LRA)に誘拐され、21歳で帰還するまで12年間、LRAに拘束されていました。既に彼女の両親はLRAによって殺されていた。帰還してから、拘束中に強制的に結婚させられた相手との子どもを一人抱え、仕事もない。そんな状況で彼女は十分な生活を送ることはできませんでした。
帰還してから数年後、テラ・ルネッサンスと出会い、2006年から当会の職業訓練施設の通い始めました。洋裁の練習中は、拘束された時に受けた右足と右肘への銃弾の傷が痛み、大変な時もありました。しかし、彼女の努力の結果、洋裁と小規模ビジネスの技術を手に入れ、2009年に無事卒業することができました。
卒業当時、彼女は月18万ウガンダシリング(日本円で約1万円)の収入を得ることができ、経済的に自立できていました。また、洋裁だけではなく、小売りビジネスや日雇いの仕事をしながら、生計をやりくりしていました。職業訓練の時間のおかげで「こんなことがしたい、あんなことがしたい」と未来を描けるまでになりました。

今の辛さなんて、過去に比べたら、
訓練卒業後、確実に自立へ向かっているように見えたリンダさん。しかし、彼女は、帰還後に一緒になった夫からのDVに苦しめられていました。そんな彼女に追い討ちをかけるように、コロナ禍によるウガンダの国全体がロックダウン。
彼女自身、仕事をすることができなくなりました。しかし、彼女は6人の子どもを養っていくために、お姉さんにお金を借りながら地酒の小売りを行い、なんとか収入をつくり出そうとします。
にもかかわらず、コロナ禍により失業した夫は、以前に増して彼女に対する暴力を振るうようになり、加えて彼女は夫の親戚に財産も取られてしまいました。それでも、彼女は田舎で生活していたことが災いし、誰にも相談できません。そして、「子ども兵の時の経験に比べたら耐えられる」と思い、逃げることもできませんでした。

そんな状況の彼女を当会と他NGOが協力し、警察と相談しながら、彼女と子どもたちを保護しました。今は夫の元から離れて、当会の職業訓練施設の近くで子どもたちと一緒に生活しながら、マスク作りに励んでいます。
彼女の自立はまだまだこれからです。同じ教室で訓練を受けていた仲間にマスク作りを教えてもらいながら、彼女は毎日マスク作りに励んでいます。そして、練習のおかげで彼女の作るマスクの質がみるみる上がり、先週(11月下旬)、初めて彼女もマスク作りで収入を得ることができました。彼女はこれからマスク作りを通して、貯蓄し、子どもたちと共に生活の再建に励んでいきます。
安心できる場所で、笑顔の歩みを
私たちもリンダ(仮名)さんの変化にとても驚きました。
保護されたときの彼女は表情も暗く、笑顔を見せることはあまりありませんでしたが、当会の施設に通い始めてから、私たちにも笑顔で話しかけてくれるようになり、会話で飛び交う話も明るくなりました。

そして、リンダ(仮名)さんは私たちにこんなことを話してくれました。
「私にとってテラ・ルネッサンスの職業訓練施設は初めて、自立できた場所だった。だから、施設に戻ってきたときはほっとしました。そんな場所が私にもあってよかった。私には安心できる場所があります。そして、私には大切な仲間がいます。マスク作りを続けて、大切な家族との生活の再建にむけて歩んでいきます。」
そして、彼女の気迫は「これから私は自立していくんだ!」と感じさせる力強さがあります。過去の辛い経験を抱えながらも、前を向き続ける彼女の自立への「マーチ」が私たちの心へも鼓動します。
彼女が仲間に助けられたように、きっと彼女も心の「灯火」を育み、誰かにつなげていきます。私たちの心が彼女の生きる姿によって灯されたように。

みなさまが心に抱いた灯火はまた誰かの灯火につながっていく。そして、その灯火は広がっていき、いつか大きな光となり、太陽のように社会を明るく照らしていく。そう私たちは信じています。
この冬、テラ・ルネッサンスは、『冬の感謝月間2020』として、リンダ(仮名)さんのような物語を、支援者の皆さまが託される想いを、テラ・ルネッサンスのメッセージを、社会へ発信していく、特別な”期間”をスタートすることにしました。
このページでは、私たちの想いを綴っています。ぜひご覧ください。そして、皆さんの想いも、ぜひカタチにしていただければ幸いです。